2008-10-13

午後から写楽を見てきた

足利市美術館で写楽と歌麿、北斎、広重の浮世絵四人展をやつてて、娘と行く気でゐたけど、その気がないらしいので、一人で行つて来た。
写楽については、写楽は誰かといふ問題があり、正解はどうでも、オレは池田満寿夫の推理が一番気に入つてゐる。さう、大首絵の一期のみが謎の絵師写楽だよ。けふ実物を見て確信したね。二期は全身になるので特徴的な顔と手のバランスは普通だし、三期は恐らく模倣だ。
いづれにしてもA4サイズくらゐの大きさで、大きいのは少なく、精々A3(北斎と広重の肉筆が掛軸が10幅くらゐあつたけど)、しかも作品保護のため照明が落されてるから、よく見えないんだ。何度も眼鏡を外して近づくしかなかつた。
写楽については、写楽そつくり、なんていふ趣向もあつたけど、そつくりぢやあないよ。豊国とか、上手いでせうに。写楽はけして絵が上手いワケぢやない。
けふは特に歌麿に驚いた。北斎も、ちよつと改めて。と言ふのは、北斎は最近、一、二年のあひだに同じ足利市美術館で見てるのだ。
なにに驚いたのか。
木版画なんだよ、浮世絵は。肉筆でないものは、木版ですから、木を彫り、色を付けて刷るといふ作業を絵師以外の人がするワケだ。この技術に驚く。A4ですよ。みなさん、よおく思ひ浮かべて下さい。あなたのイメージにある北斎の神奈川沖、赤富士、広重の日本橋、写楽、歌麿、みーんな精々A4サイズですよ。そこに書き込まれてるワケですよ。
例へば、そこに美人画だつたら、女の顔があつて、髪のはえぎはの細かい線を彫る、その無名の彫師の技術に感嘆する。そして、そこにぴつたり合せて刷る無名の刷師に脱帽。それらは凡て無名の職人さんの仕事ですからね。
展示作品には状態にバラツキがあるけど、奇麗な仕上がりのものを見ると、手仕事とは思へない。それほど細かい。色のズレさへない。ズレてると、ああ、これは版画なんだよなあ、と思ふくらゐ。そんなところに気を取られてたから、見終はるのに2時間近く掛かつてしまつた。