2012-07-15

え?こんなに飲むの?

オレは思はず聞いてしまつた。
始めからどうにもいい加減な感じがして信用できないと思つてゐた動きの鈍い太つた係員だつたから尚更だ。渡された薬は、オレンジ色の小さい粒で、それを飲むことで最終的に死に至るためのものだと知らされてゐた。オレは決心がついたら貰ふことにしてゐたのだつた(数種類の薬を事前に時間差で飲んで置くのだ)が、始めに配られたとき、他の人に手渡してゐたのを窺ひ見たときには精々5〜6粒。それがどう見ても倍近くある。
あれ?さうでしたか?
デブはとぼけた声で言ふ。巫山戯てるのか、こいつ。
ぢや、あの、確かめてきます。
オレたちはけふ中に死ねばいいので、不思議と死にたくないとは思はない。これが当然なんだと思つてゐるのは、かうやつて繰り返されてきた歴史があることを認識してゐるからだ。のろまなブタ野郎を待つてゐるうちに、一緒に死ぬことになつてゐるみんなが移動を始めた。間に合はない。どうする?
──で、目が覚めた。