2015-10-28

とか

ホームページでも気になる、と書いたことがある。中町信の「とか」問題。読書のブログで書いたが、読んだばかりの「追憶の殺意」(旧「自動車教習所殺人事件」)でどのくらゐあるか数へてみた(暇だねえ)。見落としがあるかもしれないが、全部で17箇所。多いのか少ないのか、なんとも言へないが、使ひ方が気になつてしまふのだ。因みに「とか」をいつもの岩波国語辞典第三版で調べてみよう。
P783「とか【渡河】〔名・ス自〕かわをわたること。」が頁の最後にあつて、次の頁P784をめくると、「とが【咎】」になつて、実は該当する項目がない。面倒くさいが広辞苑第二版を引いてみるか。
P1586に「とか【都下】」と「とか【渡河】」があるが、次は「とが【咎】」だ。
どうする?
新装改定新潮国語辞典第一版を引いてみよう。
広辞苑と同じ。項目がない。こんな言葉は既に誰でも知つてゐるので辞書にはわざわざ掲載しない、といふことか。
さて、どうするか。ネットで調べるか。
ありました。
出典は「デジタル大辞泉」。意外に細かい説明があるけど、品詞や語の成り立ちみたいなところは省くと、
1 事物や動作・作用を例示的に並列・列記する意を表す。
これは一番使ふ用法。なになに「とか」なになに「とか」と列記する。「言つたとか言はないとか」「見たとか見ないとか」なんてね。
2 断定を避け、あいまいにするために語の後につける。
これには補説があつて、「1990年代前半から若者の間で使われ、すぐ大人にも広まった。多用する話し方を「とか弁」ともいう。→方(ほう)→的」
2は確かに最近の使ひ方で、それまでは1のはうが圧倒的だつた。
ところで、この「自動車教習所殺人事件」はいつ書かれたものか。
1980年にトクマノベルズで出たものだと「追憶の殺意」の奥付のまへの頁に書いてある。
つまり、中町信のはうが早い、といふか流行の、若者の文章だつたんぢやないの。先取りしてたんだね。で、始めに書いた17箇所を一つ一つ検証してみようと思つてゐたんだけど、長くなつたので、その辺は後日。