2005-11-02

事件は解決してゐませんから。

石川真介「不連続線」読了。第2回鮎川哲也賞受賞作。説明されてない謎が多い。先づ、義母の死後、三箇月間なにをしてゐたのか。以前隣家に住んでゐた(主人公が二年前に嫁いで来た直後に八王子に越して行つた)主婦が、突然電話をかけて来た内容で主人公の中に疑問が沸き、調べ始める、といふことらしいが、と言ふのは他に事件を調べ始めるキッカケらしきもの、動機の説明がない。それに普通はこの程度の間柄で、しかもこの内容で電話なんかするかい?電話するくらゐなら葬式の時に来て、話が出るはうが自然ぢやないか。この電話がなくても、真相を知りたいといふ熱意があれば真相に近付けた筈だ。?秋津村役場からの返信。?義母が「静岡・浜名湖一泊の旅」に参加したこと。この2つを警察に告げるだけでも可能だつたと思へる。……といふ疑問はあるけれども、まあ、一気に読ませる。
ただ一つ、これは選評で誰かが書いてたけど、食べ物についての蘊蓄。鼻につく。吉本紀子さん、あんたはそんなところで食ひ物のことに気を取られている場合ですか?と詰問したいくらゐの場面がある。その度に義母の事件だから気持ちに余裕がある、みたいな説明があるけど、だつたら始めから自分で調べないで警察にデータを渡すつて。さうこつちが思ふと、義母へのケジメだみたいなセリフになる。その癖、結婚して二年で家と財産を手に入れたみたいなことも口にして、変な女。「一点の手抜きもない作品」と鮎川氏は評したさうだが、手抜きはなくても、一気に読ませるけど、もう一冊読みたいとは思はない。寧ろ、「不連続線」の解決篇を書いてくれ。それなら読むよ。