2008-07-02

完璧な推理小説とは難しい注文だね

本格ものと呼ばれるものは、大抵「黒いトランク」よりも辻褄が合つてないか、合つてゐれば現実味が乏しくなる、と言へるかもしれない。アリバイ・トリックにしろ、密室にしろ、ダイイング・メッセージにしろ、これを合理的に、論理的に解いても、出発そのものが現実的ではないので、多少の矛盾は出てしまふんぢやないかなあ。
それと中町信の場合、仕掛けそのものが、こつちの思ひ込みを誘導するやうになつてるだけで、殺人のトリックは難しくはない。その書き方のトリックをおもろしいと思ふかどうかで、これは好みの問題。
折原一の「沈黙者」は、この手のもので作りは凝つてる。佐野洋も絶賛?だけど、オレはをかしいと感じたところもあつたので、それはブログに書いてある。
クリスティの「アクロイド殺し」(オレはこのタイトルが好きで、ハヤカワの田村隆一訳はこのタイトルで、他は「アクロイド殺人事件」)は中町信のスタイルだね。発表当時、ズルいといふ批評がずゐぶんあつたさうだ。やられた、とオレは思つたけど。
寧ろオレが気になるのは肝心なトリックよりも、すごく些細なことです。