2009-05-19

Had To Cry Today

泣きたい気持ち、といふ風に日本語訳されてゐる、Brind Faithの曲だ。日本では「スーパー・ジャイアンツ」といふタイトルが付けられているBrind Faithのただ1枚のオリジナル・アルバム。黒い縁取りの中に、雲の浮かんだ空と左下がりに傾斜した草原を背景にして、上半身裸の幼い女の子が両手で飛行機を持つてゐるジャケット。裏には右からスティーヴィー・ウィンウッド、エリック・クラプトン、リック・グレッチが立ち、一番左にバス・ドラムに腰を掛けたジンジャー・ベイカーが写つたモノクロ写真。この1曲目がHad To Cry Todayだ。──泣きたい気持ち。さう、けふはちよつとそんな心境になつたのだ。なぜか。──
アピタ足利店でけふは卵の安売りがあつた。タイム・サービスで12:00までに500個限定。これを買ひに出掛けた。Nicosのポイントが貯まつたので、それを図書カードに交換して貰つたのがきのふ届いたから、3階の本屋で使ふつもりで、ほしかつた文庫をリスト・アップしたメモも持つて行つた。
駐車場に入ると日赤の献血車が目に入り、高血圧の宣告後、1年以上も献血してなかつたから、けふは時間もあるし、献血しようと思つたのだ。卵とバナナを買ひ、車に置いてから献血車に向かう。書類に記入すると、混んでるから待つてほしいと言はれた。なら、本屋で買物をして来るか、とその旨を伝へて再びアピタに入る。エスカレータで上がつて物色したが、目当ての本は1冊しかない。取り敢へずカードでそれを購入し、下へ。
献血車に戻るとまだ少し待たねばならない。係の人がそのあひだに骨髄移植のドナー登録の話をしてよいかと言ふ。かねてから興味があつたし、献血同様、誰かのために最低限できることをやりたいからだ。しかも登録は55歳まで。パンフレットを片手に説明する係の人の話を聞きながら、なにげなくパンフレットの文字が目に入る。椎間板ヘルニアの手術経験ある方といふ文字。あ、オレは椎間板ヘルニアの治療を半年も続けたぞ、駄目なのかな。それを言ふと、やや落胆気味に、さうなんですか。パンフの裏には更に、かういふ方は登録をご遠慮ください、みたいな一覧があり、そこには「高血圧の人」。オレ、高血圧で薬飲んでるんです。さうなんですか、お若いのに。いや、若くはないんだけど、とは言はず、残念です、とだけ言ふ。──オレの骨髄は人の役に立たないわけだ。
ぢやあ、献血だな。あとはペットボトルのキャップを貯めて、1本でも多くのワクチンを送る手助けをしよう。
名前を呼ばれて、血圧を測りつつ、簡単な問診。血圧の薬を飲んでゐる話をする。2種類飲んでゐる、と。去年の暮れから2種類になつた、とは言はないけど。それが引つ掛かる。2種類飲んでると献血できない。え、さうなの?なんで?1種類はよくて2種類は駄目なんかい?
1種類飲んでゐて安定してゐれば献血は可能です、と説明されるが、納得できない。でも口にはできない。けふはお帰り下さい。
献血もできないのかよお。血圧下がつてるんだぜ。いまは140/90で脈拍100だつたけど、これはさあ、かういふ風に脈が速いときは血圧もやや高めなんだけど、冷静ではないときなんで、それは恐らくさつきのドナー登録できない話で幾分動揺してるからなんだ。大丈夫なんだよ、いまは。
人の役に立てない、献血ご遠慮ください、ドナー登録できません、──なんか、かう、人間として役立たずだといふ判決が下されたみたいだよ。Had To Cry Today──泣きたい気持ち。
※蛇足ながら、Bob Dylanの曲にDon't Think Twice, It's All Rightつていふのがある。日本訳は「くよくよするなよ」。いまはどうにかこの心境まで持ち直した。スーズ・ロトロと腕を組んで寄り添ふやうに冬の町(ニューヨークなのかなあ)を歩いてゐるジャケットの、さう「The Freewheelin'」。「激しい雨が降る」の次の曲です。好きなんだなあ、この曲。