2016-03-17

誰が演奏してゐるのか

いま殆どがiTunesにインポートした曲をパソコンやiPodで聞くことが多く、車にはカセットがついてゐるのでCDやデジタルな音源を持たない曲(レコードさへも売つてしまつた、とか)を聞くこともできるけれども、聞いてゐて不意にこの曲は誰が演奏してるんだらう、と思ふことがあつて、さういふときに以前は直ぐに調べることができたといふ話をしようかな。
例へばいまこれを書きながら聞いてゐるのはhiko8さんから貰つたJohn Scofieldなんだけど、John Scofieldはギタリストだ、と聞いてゐる、といふのはオレは知らない人、知らないジャズの演奏家なので、教へてくれたのだが、ほかの楽器、ドラムやベースは誰なんだらう、といふのが直ぐにわからない。まあ聞いたつて知らない人なんだらうけど。
以前はどうだつたか。以前はレコードが中心で或はラジオ、カセットなど。音楽を聞くのはさういふ手段だつた。直接聞く、コンサートで聞くなんて夢のやうな話だつた。
そしてレコードを聞くといふのは、いまみたいに簡単にスイッチONではなかつた。レコードを知らない人たちが増えつつある(平成生まれは知らない!)ので説明しよう(ラッキーマンぢやないけど)。
いまはコンポなんて気取つて呼ぶけど、昔はステレオと呼んでゐた。しかも名前がついてた外国の都市の名前などだが、そんなことはどうでもいい。でレコード・プレーヤーが必ずついてゐたのだ。これがなければ、こんなステレオなんて装置は誰が買ふんだ、といふ時代でした。
そのレコード・プレーヤーのうへにレコードを載せる、この行為だつて慎重に取り扱つたものだよ。ジャケット・ケースからレコードを収めた半透明で四角に半円を足したやうな作りの袋からレコードを取り出すんだけど、いまのCDなんかよりも、もつともつと、もつともつと傷つき易いんだぜ。だつて裏表にデータが刻んであるんだから。
そこから更に面倒なのは、回転してるレコード盤に慎重に針をおろすといふ緊張の一瞬があつたのだ。自動で針がおりるプレーヤーも後から登場したけれど、途中の曲から聞くなんてことは更に注意が必要で、ミスして「ガリ」みたいな音を聞いたときの「泣きたい」やうな「気持ち」("Had To Cry Today" by Blind Faith)と言つたら。ちよつと話が逸れさうだ。
さういふ儀式をへて聞き始めるワケだよ。ヘッドホンして聞く、ロックはバカでかい音で聞くと心地好いものなのだ(ロックなんて大抵はオレたち──ゴメン、hiko8さんも入れてます──のやうなバカが聞くものだから余計だ)。で、大抵はライナーノーツつていふ紙つぺらを読みながら聞く。或はジャケットの表裏を眺めながら。さうするとそこには誰が何を演奏してるかが書いてあるのだ。ライナーか裏に。
勿論CDも同じだ。でも購入したときには見るんだけど、レンタルしたものや貰つたりしたものはなかなか難しい。
昔はよかつた、レコードはよかつた、といふ話ぢやあないんです。
簡単に音楽を聴く機会ができたかはりに、誰が演奏してゐるのか、いま簡単に知ることができなくなつたかなあ、と。ま、どうでもいいことですよ。