2017-03-30

つづき、補足

コンコンといふ音が最初にしたとき、実は後ろのトランクのはうから聞こえた気がして、誰かが出してくれえ、と叩いてゐるんぢやないか、と、さういふことは有り得ないんだけど、誰かが、人間以外のなにかといふのは浮かばなくて、ノックをするといふことは当然、叩くといふ行為ができる生き物がトランクに潜んでゐて、うつかりトランクの鍵が開いてゐて、車の鍵がなければ開かない仕組みだけど万に一つ、さういふ偶然があつて、近くで遊んでゐた子どもが(小動物の可能性もないとは言へないが犬にしても猫にしても大抵は啼き声がするだらうからそれはない)隠れたのはいいけれども、いつのまにか眠つてしまひ、気がついたら車が移動中で、……といふ空想と言ふか妄想が頭を過つて、トランクの中のその姿を漠然と想像したときの怖さが先づあつて、だから何度も何度もそれが繰り返されたときには物を考へる力がなくただもう怖がつてゐたのだけれども、それをそのまま書いてしまふと、あんまり怖い話は書かないでほしいといふ山極さんの意見もあつて、下記のやうな今ひとつ意味不明な怖い話になつたワケで、後日譚として翌々日の朝つまり一昨日の朝、通勤途中で交通事故に遭ひ、お気に入りのミラ・(ジ)ジーノのフロント部分が大破して恐らくエンジンにも損傷があり動くことはないだらうといふ状態で、もしかしたら、あのノックの音は警告だつた、気を付けろよといふ知らせだつたのではないか、と言ふ人もゐる。
そして事故の日の朝のその時間に、お袋は大切にしてゐた湯呑み茶碗を落として割つてしまつたといふ話だつた。